言語学では、言葉の構造を5つの階層(レイヤー)に分けて考えます

言語学では、言葉の構造を以下の**5つの階層(レイヤー)**に分けて考えます。これは、家を建てるプロセスによく似ています。


1. 音のルール(音韻論)

言語の最小単位である「音」の層です。

  • 例: スペイン語の「R」の巻き舌や、日本語の「ん」の音など。

  • 役割: 意味を区別するための材料です。単なる音の粒ですが、これが組み合わさって意味を持つ準備をします。

2. 単語の組み立て(形態論)

音を組み合わせて「意味を持つ最小のパーツ(形態素)」を作る層です。

  • 例: スペイン語の動詞 Hablamos(私たちは話す)

    • Habl-(「話す」というコアの意味)

    • -amos(「私たち」「現在」という情報のパーツ)

  • 役割: 語根にパーツをカチッとはめ込むことで、誰が・いつ・何をしたかという情報を単語の中に凝縮します。

3. 文章の並べ方(統語論)

単語をどのような順番で並べて文章にするかという「設計図」の層です。

  • 例: * 日本語:私は(S)林檎を(O)食べる(V)。

    • スペイン語:Yo(S)como(V)una manzana(O)。

  • 役割: 単語を正しい位置に配置することで、誰が何に対してアクションを起こしたのかという「関係性」を明確にします。


4. 意味のネットワーク(意味論)

言葉そのものが持っている「辞書的な意味」の層です。

  • 例: なぜスペイン語では「知っている」を SaberConocer に分けるのか?

    • Saber: 情報、事実、やり方を知っている。

    • Conocer: 人、場所、経験を通して知っている。

  • 役割: 言葉が指し示す概念の範囲を決めます。文化や背景によって、この「意味の守備範囲」が異なります。

5. 使い分けの空気(語用論)

言葉を「いつ、誰に、どんな状況で使うか」という、最も外側の層です。

  • 例: * 目上の人に「Tú(君)」ではなく「Usted(あなた)」を使う。

    • 「暑いですね」と言って「窓を開けてほしい」と暗に伝える。

  • 役割: 社会的なマナーや文脈を読み取り、コミュニケーションを円滑にするための調整役です。


まとめ表:言語の5階層

階層名 たとえ話 扱うもの
音韻論 材料(砂や石) 音の聞き分け、発音
形態論 部品(レンガ、ネジ) 動詞の活用、単語の形
統語論 設計図(骨組み) 語順、文法ルール
意味論 家具・内装(意味) 単語の意味、ニュアンス
語用論 住みこなし方(生活) 状況に合わせた丁寧さ、皮肉

スペイン語学習への応用

これを知っておくと、自分がどこでつまずいているか分かります。

  • 「活用が覚えられない」→ 形態論の問題。

  • 「単語は分かるのに文が作れない」→ 統語論の問題。

  • 「単語の使い分け(Saber/Conocerなど)が分からない」→ 意味論の問題。

スペイン語で人生を変えよう

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