鬱病と言語化能力

うつ病(鬱病)と言語化能力の関係についても、近年の心理学・神経科学では多くの研究がなされています。結論から言うと、うつ病は言語化能力に影響を与えることがあり、それは次のような側面から説明されています。


1. 認知機能の低下と語彙の貧困化

うつ病の患者は、以下のような認知機能の低下を経験することが多いです:

  • 注意力の散漫

  • 記憶力の低下

  • 実行機能(計画・判断など)の障害

こうした認知機能の低下は、「自分の気持ちや考えを言語でうまく表現する」力、すなわち言語化能力の低下につながります。


2. アレキシサイミア(感情の言語化困難)

うつ病の人はしばしば「自分が何を感じているのかわからない」「言葉にできない」と感じます。これは「アレキシサイミア(感情失認)」という状態で、うつ病との関連が強いとされています。

特徴:

  • 感情の識別や表現が困難

  • 内的体験を外に出せない

  • 思考が具体的・外部指向的になる(抽象的思考がしづらい)


3. うつ病と言語スタイルの変化

研究では、うつ状態にある人の言語には以下の特徴が見られることがあります:

  • 「私」「自分」などの一人称代名詞の使用が増える

  • 否定的な語彙(「ダメだ」「無理」など)が多くなる

  • 抽象性が低く、思考の幅が狭まる

このような特徴は、SNSの投稿や日記分析などでも確認されており、AIを用いた自動診断にも活用され始めています。


4. 回復とともに言語化能力は戻る

うつ病の回復過程では、以下が見られるようになります:

  • 自分の感情を整理し、語る力が戻る

  • 視点が広がり、言語の多様性が増す

  • メタ認知(自分の状態を客観視する力)が回復する

そのため、心理療法(特に認知行動療法や対話中心療法)では、言語化をうながすことが非常に重要な介入手段とされています。


まとめ

うつ病は一時的に言語化能力を低下させるが、適切な支援と治療により回復が可能であり、むしろ「言語化」そのものが回復のプロセスの一部となる。

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